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Channel: 河崎純 Jun Kawasaki 音楽活動の記 
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ヤンさんのヴァイオリン 5月17、18

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文学を、体感する。
川口市が誇る歴史的建造物で、朗読と音楽と美術が出会う。朗読者 in KAWGUCHI 第4弾!

2014年度のスタートは、鋳物工場から。
黒澤明監督作品「まあだだよ」の原作者・主人公モデルとして知られる内田百間(本来は門がまえに月ですが、記事に文字が反映されませんでした)の世界を体感してください!
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【作品】内田百?「件」
(あらすじ)
⻩⾊い大きな月の下、
⾒果てもない広野の真中に、
私は⽴っていた。
顔は人間で体が牛の妖怪、‘件’として。
人々が私の周りに集まって来る。
人々が私に期待している。
嗚呼私は、
   ―どうしていいか解からない―

【日時】2014年5月17(土) /18日(日)
       両日共に17:10開場・17:30開演 
【料金】1000円

【出演】奈佐健臣/ヤン・グレムボツキ(ヴァイオリン)
【演出・美術】北川原梓
【音楽監督・作曲】河崎純

【会場】KAWAGUCHI ART FACTORY 
       埼玉県 川口市元郷2-15-26
       http://www.art-kouba.com/
    
■ご予約方法■
□朗読者 in KAWAGUCHI ホームページ
http://www.art-kouba.com/roudokusha2/
https://www.facebook.com/events/622069744535121/

□FAX:048-222-2024
お名前・ご住所・電話番号・ご希望公演日、人数を明記の上、上記まで送信ください。

※電話でのご予約お申し込みは出来ません。
※未就学児童ご入場はご遠慮ください。

■お問合せ■
□朗読者 in KAWAGUCHI 実行委員会   
川口市元郷2-15-26 KAWAGUCHI ART FACTORY 内  
tel : 048-222-2369/ 090-3080-4234(担当 金子)  
mail: webmaster@art-kouba.com



こんにちは。地元川口市でのイヴェントです。俳優の奈佐健臣さん、演出、美術の北川原梓さん、気づけばここ数年ずいぶんご一緒させていただきました。はじめは演劇公演で音楽を担当しました。慣れない下北沢の小劇場での公演でたいへんでした。その後は、稲垣足穂「一千一秒物語」、谷崎潤一郎「刺青」フリオ・コルタサル「夜あおむけにされて」。ずいぶんと質感が異なる作品に音楽をつくってきました。今回はヴァイオリン独奏のための曲を8曲ほどつくりました。独奏楽器へのまとまった作曲は久しぶりでした。私自身もふだんコントラバスの独奏をしますし、舞台の音楽をコントラバス一本でやることも多く、それらの作業からずいぶんと発見することが多く、表現の幅もひろげてもらいましたので、独奏楽器への作曲は特別です。以前も書きましたが、こうしたテクストから音楽をつくることは、私にとっては一曲の音楽の曲のレパートリーを練習することや、即興演奏では得られないことでした。いつからからか、演奏だけでなくこのような舞台音楽の作曲をしたり、台本を書いて構成などもするようになって、舞台の音楽は、勝手に自分の専門領域であることを自負して、一方でそれは純粋に一からなにもないところから音楽を作ることが私にはできなくなってしまったのかもしれない、と危機感をおぼているここ数年です。そういう才能がもとからなかったのか、枯渇してしまったのか、、。まぁ、いっか。

 今回も朗読者シリーズでは会場とすることの多い、川口アートファクトリー。そして、今回からシリーズの音楽監督として、より深く関わることになったため、まずは演奏者探し。ヴァイオリン、それからできれば川口近郊の在住者。というリクエスト。地元でそれほど音楽家の知り合いがいないので、いや、こまったなぁ、とおもっていたところ。偶然がおりてきました。ドイツのハノーファ出身のヤン・グレムボツキー!近所の実家にたちよったとき、たまたま母が知り合いに連れられて行ったという地元のホールでの音楽会のチラシをみると、ヤンさん、なんと現在私と同じ蕨市在住。さして音楽好きともいえない母にどんなコンサートか内容を聞き、もう直感でつてをたどってヤンさんにコンタクト。その後我が家で打ち合わせ。快く引き受けてくれました。

 この作品では、アジアの内陸の乾いたメロディー、さらにそれが風に吹かれて粉々になったようなイメージでつくりはじめました。リハーサルではヤンさんは複雑な譜面をひじょうに丁寧に弾いてくれたので、あとは少しずつ崩し、ならして行く作業。はじめの打ち合わせのとき、実はあんまりアブストラクトなものは好きじゃないんだ、と告白してくれました。もちろん、バルトークはもちろんイサン・ユンやそういう現代曲も弾きこなすエリート。僕はロマン派が好きなんだ、と私は知らなかった作曲家のことも教えてくれました。でもやってみる、といってくれました。私ももちろんロマン派のようには書けないし、イザーイみたいなヴァイオリン奏者が作った機能的なアルペジオの曲も到底書けないし、中東などのアジア独自のヴァイオリン文化も模することもできない。ただただ、最初のイメージに忠実に、そして、作品の質感や、朗読(といっても奈佐さんは、毎回朗読する小説を一冊まるまる暗記しています)とのかぶりを気にしながらつくりました。

 私とヨーロッパとの関わりは、やはり抽象的な即興とか、現代音楽の音楽家が多いです。先日のベルリンでのデデコルクトのオーケストラプールであるドレスデンシンフォニカーの面々もそうである。みんな新しい曲を弾くことが大好き。初演からではなく、ベルリン公演から参加したこのオケへの初参加だったという、トロンボーンの若い青年アンドレアスは、こんなオケで演奏したかったんだ、と目を輝かせて僕に語ってくれ、熱心に指揮者に尋ね、難しいラインを時間をとって二人で練習した。明日、みんなの集合時間の30分前に集まろう、と。こちらは、彼らのような西洋音楽の伝統もスキルもなく、四苦八苦でしたから、願ったりかなったり。みなインプロヴィゼーションも得意そうだった。だから、こちらもついつい、ヨーロッパの方との演奏というと、無条件にそういうことを期待してしまうものだ。でもヤンさんのようなアプローチが、伝統というか、本流なんでしょうね。代々作曲家の親をもち、妹はオペラハウスの歌手(写真をみせてもらいました)だそうです。やはりそういう伝統への愛情を強く感じました。バッハは聖典、パガニーニは神様。

 さてここからがコラボレーションの醍醐味です。わたしもバッハは好きでずいぶん弾いてきたけれど、聖典ではないし、パガニーニも無縁、いやむしろ正反対か。少しずつ少しずつ。小説の質感を大事にしながらつくり、練習を重ね、昨日はついに会場での初リハーサル。蕨駅で待ち合わせて、川口や鋳物工場、映画「キューポラのある街」の話など、拙すぎる英語で話しながら。ヤンさんの奥様は、韓国の方で、ペルシャ文化の研究が専門で、ドイツでであったそうです。はじめてあったとき、その名前から、もしかしたらポーランド出身かな、と思いヤンさんに尋ねると、やはりおじいさんはポーランドからきたそうです。もちろん、すぐににユダヤのこと、その音楽について頭がよぎり、そういうことも聞いてみたかったけれど、少しずつ知ってゆくことが大事かなぁ。映画はもちろん、戦後の北朝鮮(あるいは大韓民国)への帰還がテーマですから、そんな話も歩きながら。鋳物工場の跡地であり、そのしみこんだ汗と錆びの名残そのままなファクトリーの中で、ヤンくんのヴァイオリンが風のように、そして少しいびつに響いたのでした。ヤン君、風変わりな曲を弾いてくれてありがとう!!わたしも少しだけコントラバスを弾くことになりました。

 奈佐さんの端正な朗読、ヤンさんのヴァイオリン(私の曲以外にも一曲イザーイの無伴奏バイオリン曲から「オブセッション」も演奏します。これは貴重です。)、場所を生かした美術、照明、そしてわたしのコントラバスも少し。ぜひいらしてください。きのう新聞記者の方のインタビューにこたえながらふと、思ったののですが、言葉や音が古いこの工場のいろいろなディティールに光があてていたように思いました。生きている場所なんだなぁ。ここがかつて過酷ともいえる労働と生活の場であったこと。数年前、別の場所ですが、当時は稼働していた鋳物工場で音楽劇をつくったときは、俳優や私も一日掃除や鉄割りのお手伝いをさせていただいたことがあります。私たちが公演を終えて、その場で、火を焚いて、朝まで飲めや歌えの宴会をしていると、もう日が出る頃にはもう70を越えるであろう職人さんや、どこかアジアからの労働者がやってきて仕事の準備をはじめました。少しは酔もさめました。

新聞記者の方の取材を待つ間、 初の会場リハーサルが終わり、安心して、コントラバスを弾いたり、少しぼーっとしていると、ついついすでに次回作の構想を。まだ作品ができてもいないのに不謹慎かな、と少し躊躇したけれどつい口に出すと、演出の北川原さんもいまそれを言おうとしたところでした、とのこと。いろいろ生きてるだけで大変ではありますが、やっぱり作り続けていたいなぁ、と。 この作品が終わると、舞踊「道成寺」の音楽、大学生の発表の演出や作曲、今期はなんと、チェホフの「かもめ」パウル・ツェランの詩、謡曲「黒塚」から台本を構成しました。おなじ川口つながりでお世話になっているタタミスタジオの、エアロヨガのための音楽、石橋幸さんの紀伊国屋ホールでの公演の構成、演出、ブレヒト・ロルカのつくばでのワークショップコンサート、演奏で参加のデデコルクトのワールドツアーなど、いろいろ舞台関連の活動が続きます。今年は仕事が少なめで、少し余裕を持って仕事してますので、やはりじっくり作れて充実します。反面、生活は厳しいですが、、なんとか。そうそう、先日そんな隙間を縫って、演奏のレコーディングの仕事。現場で楽譜を渡されると曲名が「きのこの山、たけのこの山」と「じゃかチーズ」。あはは。とある会社のCM.。そんな日々の音楽活動の記、でした。

みなさま5月17、18ぜひ川口に!!


ヤン・グレムボツキ Jan Glembotzki(ヴァィオリン)



4歳の時にピアノを、 2年後にバイオリンをはじめる。芸術家一家(作曲、俳優やオペラ歌手)で育ったヤンは、ハノーバー音楽大学でヴァイオリンの修士学位を取得。
Krzysztof Wegrzyn (旧ハノーファ国立歌劇場のコンサートマスター、「国際ヨーゼフヨアヒムヴァイオリンコンクール」の創設者)、Jutta Rübenacker-Müllerに師事。
ドイツ、ノルウェー、西アフリカ、日本、ポーランドを含む様々な国のソリストとしてだけでなく、室内楽奏者として、国内外の公演。ジャンは、このようなNDR放送交響楽団、プレーブレーメンフィルハーモニック管弦楽団、ヨーロピアンフィルハーモニー管弦楽団で演奏。


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