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Channel: 河崎純 Jun Kawasaki 音楽活動の記 
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7月30日 ソロコントラバスCD【ビオロギア】発売コンサートのおしらせ 舞踏公演「短夜」を終えて

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 3日間の舞踏公演の音楽終了いたしました。舞踏との共演はかつて、特に20代の頃は何度もさせていただきましたが、舞踏を巡る言説や、伝説とは距離をとることが、いつのまにか私のスタンスになっていました。元来私にはひじょうに魅力的で「近しい世界」のように感じていましたし、それゆえ逆に安易に近づくことが危険だと思っていたからです。また、舞踏とのセッションは、即興的なものも多かったので、当時のわたしの状態では、それらの身体やことばを即時に感受することは難しかったですし、また感受するだけで捉えきれず流されていくようでもありました。「舞踏」に対する逆説的な想いは、「即興」というものに対する考え方ともとても同機していました。以来わたしが主に取り組んできたことは、「即興」という生の創造性の場を可能にするための仕組みや、システム、コミュニケーションについてでした。ですから、たとえば作曲という行為もそういうためにしてきましたし、ワークショップや教育の現場等ででグループを組織したり、コミュニティの機能の実験も同様です。ですから、純粋な即興演奏や、ダンスとの共演はとても大事なので、頂いた機会は大切にしてきましたが、私自らそのような場を企画する事は、思えば10年ほど基本的にありませんでした。

 今回の公演のお話をいただいて以来、個人的には随分前から心の準備をして、そういう私と舞踏との関係をもう一度自ら見つめなおしてみよう、という気負いのような状態からスタート。舞踏が生まれた当時からの最前衛にいらした小林嵯峨さんとの作業はその絶好の機会であると思いました。しかし公演中日のトークショー「遺言」で、嵯峨さんが、発言者の方が土方巽と東北についておはなししていたとき、他の同輩、かつての土方門下の高名な舞踏家の方々の例も挙げながら「でも、わたしは、わたしたちは別に東北ではなく、私は三重県です」ときっぱりおっしゃっていました。そしてダンサーになられる前、三重のご実家の凋落してしまった味噌づくり家屋での、日常の聴覚などの感覚的体験。舞踏というものの蓄積そのものでありながら、大言も多言もなく、大酒も飲まず、軽やかな身振り、さりげないユーモア。トークをきいて、残すところ3回の公演を前に、「舞踏」という言葉やそれを巡り、言い当てるような言語を用いてひとくくりにしてしまうのではない、リアルな現実の強度というものをあらためて認識させられました。もちろんそれは「舞踏」という言葉ではなく「小林嵯峨の踊り」との作業であること。そしてなによりも「幽霊」と「ベルメール」という嵯峨さんの長年のテーマそのものへの接近。

 舞台上では、全身、目、眼。眼で聴き、耳で視て。なので、一公演おわるごとに本当にどっぷりと疲労しました。楽器を弾かない無音の15分、音楽はほとんど「ふつうの」楽音を用いない即興の「幽霊」パート。幕間のソロ。オリジナルや、バッハ、アラブのマカーム(rast やsaba)での即興、ドビュッシーのフルート曲syrinx、ヒルデガルド・フォン・ビンゲンの聖歌、西田佐知子、それらをいつもとはまったく違う弾き方で弾いた「ベルメール」パート。そしてアンコール!ショーダンス風の「コーヒールンバ」。

 即興演奏家としてははずかしいことではありますが、特に無音と即興の部分はほんとうに身体がどっぷり疲れました。最近は、ソロのCD発売のコンサートや、パフォーマンスの構成や演出、演劇の音楽監督などがつづいているので、特に演奏という事に関しては、自分の生理や認識している情報、頭の中で考えられる範囲のことに忠実なあまり、いつのまにか自分の枠というものを超えようとはしていなかったからかも知れません。反省!嵯峨さんやスタッフの皆様、お客さんのつくりだす磁場で、自分一人ではとても立ち入ることのできないコントロールぎりぎりの音と身体の限界領域の場に「存在」することができました。そしてその存在はこの公演の大きなテーマである「非在」たりえたのか。

 千秋楽の翌日は、トルコの振付家アイディンさんとの「db-ll-bass」の続編、ニュープロジェクでの稽古。芥川版「桃太郎」。言葉がはいってきた。夜はダンスワークショップのゲストで4人のダンサーのかたとそれぞれクリエーション。本日は立教大学の課外発表の台本構成。音楽劇の歌の作曲。明日は「ブレヒト/ロルカ」プロジェクトのリハーサル。明後日は即興演奏の本番、そして日曜日は毎月の石橋幸さんロシアアウトカーストの唄、ロシア語の歌。そういえばこのブログの自己紹介のところに「音、身体、ことばの諸関係を模索」などと、つまらないことを自分で書いてあったのを思い出したけれど、そのとおりといえばそのとりだなぁ。

こんな日々のなかでの7月30日ソロコンサート。ちゃんと演奏しなくっちゃ!!ぜひお誘い合わせのうえお越し下さい。

ソロコントラバスCD biologia【ビオロギア】 発売コンサート VOL2 7月30日(火)西荻窪 音や金時

7月30日(火)

西荻窪 音や金時 

OPEN 18:30 / START 19:30 2300円

http://www2.u-netsurf.ne.jp/~otokin/

杉並区西荻北2-2-14 喜志コーポB1
TEL: 03-5382-2020

西荻窪駅北口徒歩3分

お問い合わせ kawasaki_jun6@r7.dion.ne.jp



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